「早くこのカオスから抜け出したい」

ドロ水の中で目も開けられず
荒波に溺れて毎日アップアップしながら
早く抜け出したいと必死だった

いつの間にか抜け出して
急に穏やかな青空が広がっている

そんな話をすると

「そうですかぁ～？！えへへ」

すごいですね、早いですね！
などとほめるとすぐ調子に乗る

アタシなんか
「本当ですか？」
「ほめすぎじゃないですか」
「でももうちょっと早くないと」

と自己反省するが
Tさんなんか最初のころしょっちゅう
そうやってほめすぎるほどほめて
何を根拠にというほど褒めちぎって
自信をつけさせようとしたのだろうと思う

入ってまだ1ヶ月も経たないUさんが
これほどまでに仕事をこなすとは
誰も予想していなかったであろう
これほどまでにSさんと雲泥の差をつけるとは
一見そんな風に見えない彼女を
誰も期待していなかったであろう

だから伸び代がすごい

期待以上のことをする
期待以上の結果を出す

モタモタと今までのペースでいると
圧倒されてしまう

終わりましたと予想以上に早く終わってしまい
残業どころか定時前に帰れてしまう
仕事がないんだもの
帰るしかあるめえ

*********神降臨**********

少し早く着くとお局様が
事務所の掃除をしていた

「たまに早く来たらやってるのよ」

我々にやれとは1言も言わない
カギを持っていないからしたくてもできないのだけど

そういえばトイレは誰がやるの？
業者を頼んでいるそうだが
キレイになっているとは思えない

ちょっと手を出したら止まらなくなった
ダメだ！
武器が足りない！

調べると長年使っていないトイレは
その辺の洗剤では落ちないので
ホムセンでグッズを揃えてくる

エプロンやゴム手と
完全戦闘態勢で「便器の黒ずみ」と
朝から汗だくになって戦う
毎日根気よく磨く･･･磨く･･･

「業務に支障のない範囲でね･･･」

*******おばさんの性*******

「すっごくキレイになってる！」
「何で落としてるんですか？」

ヤスリです
細かい耐水の紙ヤスリを数種類
徐々に番数を上げていって
後は根気よく磨く

黒ずみが徐々に落ちていく
白い便器が戻ってくると感動しますよ

もう水質と回数のせいで
どうしてもついてしまう黒ずみ
完全に真っ白にはならなかったけど
最後に便器にスタンプを押して
芳香剤を置いて大仕事は終わり

せっかくグッズをそろえたので持ち帰らず
今後ヨゴレを貯めないように時々
時間を見つけてやればいいと思う

この暑い時期にやるもんじゃないね！
涼しくなったらまた磨きます

正直よそんちのトイレをそこまで？
と思ったりした
時間外で無給
グッズは自腹

けど1日のほとんどをすごす職場
尊敬し信頼する上司や同僚しか使わないトイレなら
家族も同然じゃあるまいか

男子トイレの個室など
もう何年も使っていないらしく
便座もひどいことになっていた
Tさんが会社で「大」をしないといえばそうなんだろうけど
小便器も2つあったら1人じゃ使い切れない
コ汚い石鹸も捨ててやったし

「え、トイレ掃除してくれてるの？」
「鈍くてすみません」
と言っていたTさんもさすがに気づくんじゃないかと

勢いで冷蔵庫の中の掃除もしたけど
これは誰も気づいてくれない

*******相乗効果********

あまりに申し訳ないと思ったのか
Uさんはキッチンを掃除してくれたらしい

今まで人手がなかった古い事務所
これから少しずつ変えていきましょう！
おばちゃん2人いれば難しいことではありません

火がついた
神が降りた
職場ごときになぜそこまで？

Uさんのおかげで時間的精神的に余裕が出てきたから

今までは早く来たらまず午前中のノルマをやっつけること
トイレ？汚いですけどそれはアタシの仕事じゃないし
それよりやることが山ほどありまして･･･

Uさんが来てからいいことずくめです
休日のTさんに電話することもなくなった
ただそれは自分がウチの事務所が
時を経て成長したともいえるが
優秀なUさんのおかげでさらに飛躍して改善された

支社の人たちもミスが減ったと
変えてみるものだねと感心してくれているらしい

仕事から帰っても休日も
ピアノやDIYや
日帰りで実家とか
今までお預けにしていたこともできるようになりました

定時で帰ることもしばしば
今日は気持ちよく
遅い注文はタタ切って
ズルズルと残らなくてよくなりました

「じゃ早く送って来いと」Tさんの言うとおり
こちらもやることはやって言いたいことが言える

今まで散々下げてきたTさんの頭も
少しは上がるように
休日はゆっくり休めるように

「PCを開けなくなりました」

翌日が怖いけどと言うけど
お叱りメールも来ないし
前ほど大きなミスがなくなったようだ

ようやく普通に呼吸ができるようになった
不整脈が出なくなった

そんなわけですでに3ヶ月経っている
大先輩コバちゃんを
Uさんが時々「ねーさん」と呼ぶ
＜オフィシャル外で
自分なら尊敬し敬愛する相手に言う言葉
本当？
持ち上げてるだけ？

Uさんにもきっと向いている職場
長く勤めたいと気を使っているのかも

12:00のランチ
定時の退社

そんな感じで今
先が見える予定が組める
ようやく落ち着いてきました

写真をたくさん貯めているのですが
UPするのには時間がなくて
またそのうちです

目の前の空き地

　何ができるの？